前面道路が「私道」だったら?

物件を探していると前面道路が公道ではなく「私道」という場合があります。
公道と私道、その違いは国・都道府県・市町村が所有しているか、個人または法人・企業が所有しているか、です。

字面にして公(おおやけ)に対しての「私」ですから、ことばの上では「公のものではない」という、なんかグレーな部分や面倒な決まりがありそうな、そんなマイナスイメージを想像してしまいますか?

前面道路は個々の物件において最も重要な項目です。

ひと口に私道といえども、公道と何ら変わりないと思われるものから、役所にも誰にもわからないことだらけのものまで、その状況は千差万別です。
逆にたとえ公道と言われてもその実態がよくわからないところもあります。

ですから要は案件ごとに、目に見える「現地」の現状をよく観察すること、目に見えない権利関係や約束ごとを理解することです。

道路については前もって十分理解を

前面道路の詳細について初めて聞いて知るタイミングが、まさか契約の直前(重要事項の説明)というのはいけません。

必ず前もって聞いて十分理解したうえで物件を決めましょう。

建築基準法では原則建物の敷地は「幅員4m以上の道路に2m以上接する」ことが必須です。
この「道路」とは公道・私道の別ではありません。
「建築基準法上の道路に該当する」という意味です。

これをクリアしなければこの土地に建物を建築できません(再建築不可)ということになってしまいます。
もし再建築不可であれば、ふつうはその物件資料に「再建築不可です」とハッキリと書きます。

       ▶関連の記事:再建築不可の物件

気に入った時点で物件のさまざまな要素について担当者にたずねるとは思いますが、道路はもっとも大事なところですから必ず確認しておきましょう。
道路の種類(建築基準法上の)は公道・私道というだけではなく、実にさまざまです。

道路種別についてはこちらの記事を参照ください。

                     ▶関連の記事:道路の種別は

広告だけでは道路についてすべて詳しく書かれていないので、まず物件資料をもらいましょう。
物件の問い合わせをしたり、現地を案内されるときに手渡される、概要を記した物件案内書です。

ここにあるいくつかの項目のうち土地や接道状況、前面道路についての欄を見ます。
書式が異なっていても、概ね共通して「接道方位:○○側 幅員約○○m の 「私」or「公」道 に 
約○○m接面」というふうに書かれています。

ちなみにもし、そこが空欄のまま…?の資料が手元に来たら論外です。
適当な紹介をされたのか、まだ道路の調査をしてないのか理由はどうであれ、その先はナシです。

今回ははひとまず 「私道に面しており建築が可能な物件である」、ものとして考えていくことにします。

私道で気になるのはどんなこと?

私道は私有地なので、原則所有者の許可がなければ他人が自由に利用することはできません。
私道だった場合に気になるのはどんなことでしょう。

・自由に通行できる?
・維持管理は誰がどのように?
・税金はどうなの?

大きくこの辺りかと思います。

自由に通行できる?

まず、「誰が」所有しているか、が関係します。
私有地なので、所有者の許可なしに所有者以外の者が自由に利用することはできません。

A.私道を利用する土地の所有者たちで共有で所有している
B.私道を利用する土地の所有者が分割(分筆)された私道を持ち合っている
C.その他、分譲業者や地主などが私道全体を所有している

A.隣接の所有者で共有

B.分割して持ち合い①

B.分割して持ち合い②

図:所有者不明私道への対応ガイドライン(法務省民事局・令和4年6月)より

ふつうA・Bの形態のとき、建物本体のある敷地の区画とセットで販売になります。
自らが私道を所有し、すでに前の所有者も長年にわたり共同で使用している事実から、おそらく日常の通行に支障はないでしょう。

ただし、自家用車の通行や工事車両の進入については別途取り決めがあるかもしれません。

Cのときは私道は自分の土地ではないため、通行にあらためて所有者の承認や通行料が必要なケースも考えられます。

維持管理は誰がどのように?

私道の維持管理は所有者または利用している方がおこなわなければなりません。
補修や掘削に関しては所有者単独で行えるものと他の人の合意が必要な場合とがあります。

【保存】各共有者が単独で可能

【管理】各共有者の持ち分の価格に従い過半数で決する

【変更(軽微)】各共有者の持ち分の価格に従い過半数で決する

【変更(軽微以外)】共有者全員の同意が必要

以上のように区分されており、それぞれ行為の内容によって対処が異なります。
前段のA・Bの所有形態の違いによっても異なります。

あまりにも個々のケースによることなのでここでは省略します。

発生する費用の負担について取り決めがあればそれに従い、所有者同士で同意や承諾のうえ工事を行います。

ところで、所有者不明の場合は同意を得られないなど支障があるため、令和4年6月「所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)」が公表されています。

資料所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)

また、Cのように直接所有していなくても、維持管理料等の負担があるかどうか確認が必要です。

私道は所有者および他人の土地が建築物の敷地として認められるために、「道路(道路部分)」として提供されています。

ところが「私」名義の所有であるため、人によっては「私物」という思いがあったりします。
みだりに不特定多数の人が通行することを良しとしなかったりします。

もちろん通行の妨げとなる建物の建築、勝手にモノを置いたり車を止めておくことはできません。

私道に起こりうる身近なトラブルは主にこういった考え方がもとになります。

税金はどうなの?

そして税金。
私道でも保有していれば固定資産税がかかります。
取得時には不動産取得税、相続時には相続税もかかります。
もちろん、名義を変える(所有権移転登記)ときにも登録免許税が。

ただし、所在の自治体に私道部分を道路と認められれば固定資産税・不動産取得税は非課税になります。

私道の相続税評価額は、通常の土地の評価額の3割です。
不特定多数の人が通行に使用している私道は、相続税評価の対象とはならず「0円」となるはずですが、案件個別で状況は異なりますので素人判断するのが難しいところもあります。詳しくは税理士さんに。

ざっと挙げてみただけでも、私道にはリスクがたくさん?

私道のリスクを最低限にしておく

接面している道路が私道なので、通行やインフラの維持管理に関して不安…

そんなときは私道の「通行や掘削に関する承諾書」が交わされているかどうか尋ねてみてください。
その内容は次のようなものです。

★対象となる土地の所有者とその関係者は、当該私道を無償で通行すること(場合によって車両も含めておく)。
★生活に必要な水道管・ガス管などの設備の新設・補修の際は、当該私道を無償で掘削すること(掘削工事をした人が費用負担して原状回復する)。
★つぎの所有者にも以上の内容について継承すること。

この承諾があればすべての問題の解決に通じるというものではありませんが、あるに越したことはなく、現在ではごく一般的だと思います。
特に前段のBとCの場合は必要ではないでしょうか。

こういった覚書は、現に居住している近隣の方同士であれば意思疎通もできていて必要が無いのかもしれません。

しかし、いまのところ取り立てて問題がなくても、相続で代がかわったり、売買で所有者がかわると、その人との関係はまた別なのです。
ですからこういった文書は、新たに作成される際には次の所有者にもその内容が継承される内容にしておかなくてはならないのです。

私道について さいごに

私道に関するリスクは物件個別のケースによります。
ただ、何をもって安心と言えるかはその人によりますし、過度に意識し過ぎる必要もないとは思います。

さすがに「前面道路が私道のときでも自ら持分を所有していたり、道路の通行や掘削の承諾があればほぼ問題ありません」ってそこまで断言してしまうのは少々雑な感じがします。
でも、私道の通行掘削承諾が存在するかだけは確認しておきましょう。

また、私道に面しているから公道に面した物件相場の7割程度で取引、というのも散見しますが、私道だからといって一律に価格が3割ダウンするとまでは言えないでしょう。

逆に妙に安いな…と感じるのであれば別の何かが原因の可能性があります。

周辺と比べてアスファルトの状態がよくなかったり、住民による私道の利用のされ方で見えることもあるでしょう。
異なる曜日・時間帯で現地の様子をみておくのもよいかもしれません。

わからないことは早めに担当者にも聞いてみましょう。
即答できることもあれば、調査に少し時間がかかるものもありますし。
その辺をきちんと理解して説明してくれる業者・担当者でなければいけません。

たとえ前面道路が公道であったり、マンションなど集合住宅であっても、近隣との関係が重要なのはどこでも同じです。
お互い共通の利益に関することですから、住民(所有者)同士が協力しあわなければなりません。
何か起こるときというのは、お互い感情的に行き違いがあるときです。

目に見える「現地」の現状をよく観察すること、目に見えない権利関係や約束ごとを理解することです。
今回の私道についてだけでなく、不動産の購入前にはいろんなことを知っておかないといけませんね。