
転勤など何らかの事情で久しぶりに賃貸物件を探していると、諸費用の中に家賃保証の保証料というものがあり、いったいこれは何だろうと思われるかもしれません。
今では民間の大半の賃貸物件で賃貸保証のシステムが採用されていて、部屋を借りようとしたときには賃貸保証会社の審査ならびに保証料が必要になっています。
賃貸保証って?
かんたんに言うと賃貸保証とは、家賃の滞納があったときに連帯保証人ではなく、賃貸保証会社が一旦立て替えて貸主・大家さんに支払う、というものです。
連帯保証人不要の物件が増えているのはこの賃貸保証システムがあるからです。
もちろん「立て替えて」ですから、後々ちゃんと借主あてに保証会社がその分を回収に向かいます。
ここだけとらえると家賃がちゃんと入らなかったときの保険として大家さんが負担すればいいのに、とも思えますが…。
住宅ローンを組んでマイホームを購入の経験がある方ならご存じかと思いますが、
借り入れの際の「保証料」や抵当権設定登記費用などは金融機関ではなく購入者が負担します。
住宅ローンを利用する際の必須条件です。これに異を唱えてマイホーム購入をやめたという話はあまり聞きません。嫌なら現金一括で購入するほかないのです。
これと同様に借りる側に万が一何かあった(払えない・返せなくなった)ときに、
貸した相手に「ひとまずその時は」迷惑を掛けなくても済む(ゼロではありませんが)ためのシステムです。
部屋を借りたら家主に家賃を支払うのは借主の当然の義務ですから、賃貸でも同様に家主に家賃を万が一払えなくなったときにほぼ自動的に保証会社がその立て替えをしてくれるわけです。
身内や連帯保証人にお金の立て替えをお願いするのも決して気持ちが楽ではないですし、もしくはそういった人のところへ家賃の催促が行くなんて格好がつきません。
連帯保証人ではダメなのか?

いま、あなたに身近な人の中で誰か連帯保証人になってくれる人がいそうですか?
まずは親やきょうだいを想像しますが、親が高齢であったりきょうだいがいなかったりすることも多いですし、疎遠だったり仲が悪かったりするとそもそもお願いできる人がいない場合も起こり得ます。
また、連帯保証人も入居希望者同様に審査されます。
連帯保証人となる人に対しても収入や年齢に制限がつくので、誰でもなれるというわけではありません。
最近では民法の改正で、賃貸契約書に「連帯保証人の負担する上限額」を明記しないと契約自体が無効となります。
「ここにサインしたら自分が何百万も負担しなければいけないかもしれない…」
連帯保証人になろうとする人には、契約書に明記された金額がなかなかリアルに目に飛び込んでくるのです。
これに抵抗を覚える人も少なからずいます。
以前より連帯保証人の確保が難しくなってきているかもしれません。
たとえ連帯保証人をたてたとして、連帯保証人のことを貸主はよく知りません。
それに今はよくても将来にわたって滞納した場合の家賃分を支払える能力が続くかどうかはわからないのです。
なかには連絡がつかなかったり、支払いを拒まれるようなこともあるでしょう。
大家さんだって安心して貸し出したい

貸す側にすれば数千万円や数億円かけてアパートやマンションを建築・取得し、あるいは借金をして賃貸経営にのぞんでいるわけです。
借り手が長く安定的についてほしいし、建物自体も老朽化にメンテナンスも必要です。
もしかしたら出した費用がすべて回収できるかどうかもわかりませんしね。
そこで賃貸保証の役割として、家賃が滞納された場合に大家さんが確実に家賃分を回収できるという点が重要なのです。
しかし実際、単に家賃の滞納はそれだけの問題に終わりません。
借主が家賃を滞納していたとしても、大家さんは簡単には借主を追い出すことができないのです。
貸主が訴訟を起こし判決が出たあと、さらに強制執行を申し立て、財産の差押という流れになりますが、とてもじゃないですが家賃収入どころの騒ぎではなくなります。
無駄な時間と並々ならぬ労力、ここまでの手続きをすると弁護士報酬と裁判費用で相当な金額がかかるのです。
ここに高いリスクがあるので、賃貸保証の利用が増えているのです。
これで安心して貸し出すことが出来るというわけです。
貸主・大家さんの安心・安定は、部屋を提供される借主にとってもそこでの生活の安心・安定につながることだと思います。
保証金が不要となる場合も
部屋を探すとき、おそらく家賃のみで物件を決めることはないでしょう。共益費や管理費、敷金など初期費用や更新料などトータルの費用をみて考えます。
賃貸保証があることによって貸主が保証金を預かる重要度が低くなります。
保証金がなければ借り手にとってもそのぶん初期費用をおさえられるので、負担が減りますね。
家主に預ける保証金だと家賃の数か月分になりますが、賃貸保証の保証料は居住専用の場合、家賃の半分くらいか、MAXでも家賃相当額までになると思われます。
借主・貸主両方にメリットが
一見、借主が保証料を負担するので貸主・大家さんにだけメリットがあるように思えますが、お話ししてきたように賃貸保証会社を利用することは、借主・貸主両方にメリットがあります。
借りる側としては、連帯保証人を探す手間や頼めなかったりすることを心配しなくてもよく、物件によっては初期費用がおさえられるケースがあります。
また貸す側としては、万が一家賃の滞納が発生したとき、賃貸保証会社から家賃分を確保できます。
安定した収入と煩雑な手間から解放されることによって、貸主が賃貸経営の本質といえる、良質な賃貸住宅の提供に専念できるのは、借りる側にとっても喜ばしいことです。
賃貸保証という仕組みが普及してきたのは現在の不動産賃貸、貸す側・借りる側それぞれの事情に合ったものだからこそなのでしょう。