管理規約・使用細則は契約時に配布される

マンションにある管理規約という決まり事

多くの世帯が同じ建物に居住するマンション。
部屋は異なれど集合住宅で他人同士が共同生活を送るには、そこに関わる住民たちが「約束ごと」を明確にし、お互い守っていかなければなりません。

区分所有法ではマンションの維持管理をするための団体(管理組合)を区分所有者全員で構成し、その団体の中で守るべきルールを「規約」として定めることができる、という規定になっています。

その規約として制定されるのが「管理規約」です。「マンションを管理するための憲法」といわれます。
それぞれのマンションごとの実情に合わせて、重要な項目が盛り込まれています。

マンションにお住いの方でもことあるごとにしか開くことのない管理規約ですが、最近目を通したことはありますか?
実際開いて見るのは、理事会の役に就く、或いはリフォームを計画する、売買にかかわる、主にこういったタイミングになると思います。

内容はどちらかといえば聞きなれない用語も多くて、読んでもスラスラ頭に入ってくるものではないのですが、その内容を理解せずマンションというコミュニティで生活することはできないのです。

規約に背いて、または無視する、というのは区分所有者としての資格がないのと同じことです。

法律にもとづいた組織において共有されるルールですから、組織の一員となる者がこれを守らないということは法的にも許されないのです。

管理規約の制定にはお手本がある

管理規約の内容はそれぞれのマンションでまったく自由に決められるわけではありません。
区分所有法に定められ変更することができない事項と、任意に制定することができる事項があります。

規約に含まれるのは、

・敷地、建物、付属する施設の専有部分と共用部分の範囲と使用方法
・理事会の職務権限や役割、管理組合の運営について
・管理費や修繕積立金などの管理組合の会計に関すること

といったものが主な内容の柱です。

しかしながら、これら条文を住民・所有者だけで一から練り上げて作り上げるのは大変です。

そこでそれぞれの管理組合が管理規約を独自に制定する際に、管理規約の標準的なモデルとして参考となるよう、国土交通省が「マンション標準管理規約」を作成しています。

もともと中高層共同住宅標準管理規約として、当時急速にマンション建設が広まりつつあった1983年に制定されたものが、時代にあわせた改正を重ねてきたものです。

現在、多様化したさまざまなタイプのマンションに対応すべく、マンション標準管理規約はつぎの3つの種類があります。

1.単棟型  敷地に1棟のみ存在しているもっともシンプルな形態
2.団地型  広い敷地に複数の棟が存在している形態
3.複合型  居住専用部分と店舗・事務所など居住目的以外の入居がある場合

管理規約の効力がおよぶ人の範囲

管理規約は、区分所有者である組合員本人だけでなく、その家族や同居人は当然のこと、区分所有者と賃貸借契約を結び部屋を借りている賃借人、占有者までその効力はおよび、拘束されることになります。

また、売買や相続・贈与などにより新たに区分所有者になった人も効力の対象となり、規約に記載されている事項を遵守しなければなりません。

ですから自ら直接居住していないような場合でも、管理規約について知らなかったということでは済まないこともあります。

なお管理規約を保管する者は、利害関係人より規約の閲覧を請求されたときは、それを拒む正当な理由がある場合を除いて規約の閲覧をさせなければなりません。

こうした区分所有者本人以外で管理規約を順守すべき関係者は、この利害関係人に該当することになりますからいちど調べてみると良いかもしれません。

管理規約は変わっていく

最初の管理規約はマンションの新築分譲時に分譲会社によって用意されるのが一般的です。

しかし、時代の変化や入居者の状況の変化に応じて、その内容を変更する必要に迫られる場合が必ず出てきます。

マンションでもペットの飼育の要望が広まっていますし、最近では民泊としての使用の是非が多く取り上げられました。

在宅勤務や副業が増えてくるとなれば、考えようによっては専ら居住用と事務所使用の区分も曖昧な気がします。

(規約の設定、変更及び廃止) 第31条  
1.規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
2.前条第2項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

規約の変更は区分所有者及び議決権の各四分の三以上というかなり多数による集会の決議になります。
ですから意見が分かれたり、一部の所有者の権利に影響する場合などは成立しないのです。

管理規約を補足する使用細則「暮らしのルール」

管理規約を補足するものに「使用細則」があります。
これは管理規約で定められていない事項について、日常のマンション生活上の、注意事項や専有部分・共用部分の使い方など、より細かい暮らしのルールが記載されています。

たとえば、

  • 集会場やロビーの使用について
  • 駐輪場・駐車場の申込・使用・料金
  • ペット飼育可の場合、飼育方法についての詳細
  • 家庭からのゴミの出し方や分別について
  • 専有部分のリフォーム工事届・養生などについて
  • 各戸のベランダ使用上の禁止事項、共用部分の喫煙の可否
  • 楽器の使用・歌唱、深夜の大声・歩行音など騒音に関して
  • 管理費の滞納があった時の督促

など、身近なものが多いです。もちろん、マンションによってその内容は異なります。

こちらの使用細則は一般的に、集会に出席した組合員の議決権の過半数で決定されるので、状況に応じて柔軟に追加・変更できます。

管理規約は必要最低限の重要なことを定め、細かいルールは使用細則で定める、という役割分担になっています。

管理規約のもうひとつの重要な意味

「管理規約」と「使用細則」は、分譲マンションを所有している区分所有者だけではなく、同居している人、賃貸として住んでいる人、全員が守るべき決まりです。

マンション管理規約が機能することにより、居住者全員が良好な住環境のもとに暮らせることを実現するのが目的です。

さらにその結果、誰が見ても快適なマンションだという評価になれば、マンションの資産価値の維持・向上にもつながります。

このことからもマンションにとって管理規約はもうひとつ重要な意味をもっているのです。