マンションなどの集合住宅にはエレベーターがあってしかるべき、エレベーターなしなんて考えられない!という方もいらっしゃると思いますが、現実には数多くのエレベーターなしマンションがあり人々が生活しています。

私自身振り返ると、生まれ育った実家以外でのマンションや団地での暮らし、それらの物件すべてが「エレベーターなし」だったことに今更ながら気づきました。
実際それってどうなのか?をご紹介したいと思います。

何階建て以上ならエレベーターがある?

エレベーターのないマンションは階層が低く、エレベーターがついているところは高いというイメージがありますが、何階建て以上になると設置されているものなのでしょうか。

実はこれは階層の数によるものではなく、建物の高さで決められていて、31mを超える建物には建築基準法で「非常用の昇降機」を設けなくてはなりません。
これが平常時に利用される、「エレベーター」になります。

31mという高さといえばだいたい7階から10階建てに相当します。

実際は5階より高い、6階以上の建物でエレベーターが設置されていることが多いようです。

ただし、例外として高齢者向けサービス付きマンションでは3階建て以上でエレベーターの設置が必要です。
また、自治体によっては建物の種類や用途によりエレベーターの設置が義務付けられる場合があります。

集合住宅大量供給の時代

昭和30年代~40年代の高度経済成長期、人口増加にともない良好な環境と最新の設備をもった住宅を供給するため、郊外に大規模なニュータウンがつくられました。

昭和の団地に欠かせない足、路線バスとケヤキ並木

このとき象徴的であったのが集合住宅、いわゆる「団地」で、いまのUR都市機構の前身・住宅都市整備公団、府や市の住宅供給公社であったり、公務員宿舎、民間企業の社員寮などの多くがエレベーターのない5階・4階建ての鉄筋コンクリート造で建設されました。

この時代の団地の大量供給により5階建てまでならエレベーターなしという標準の目安になったのではないでしょうか。

6階建て以上でエレベーターのないところは今のところ記憶にありません。

たしかに実際に生活してみると階段の昇り降りは5階まで、という設定は何となくわかりますね。

昭和の終わりとともに、新たに建設されるエレベーターなしのマンションは一気に減っていきます。

エレベーターなしマンションのメリット

1.費用的な面

エレベーターがないということはその設備の維持費用が要らないということですから、管理費等の負担が抑えられます。

賃貸における家賃設定は3階を超えると安くなるのが一般的で、月々数千円ではあってもその差はありがたいものです。

購入の場合は建物自体が古くてほぼ土地値となれば価格自体は安く済みます。

2.敷地の広さ

古い時代にマンション単体の場合だけではなく複数の棟がゆったりとした配置で建てられているところも多く、その敷地が広いのが特徴です。

分譲の場合、土地の広さがそのまま資産的な価値にもつながります。
日常生活上では日当たりや風通し、眺望に影響します。

3.運動不足の解消に

階段の昇り降りが必須のため、否応なしに運動になります。
一戸建てからエレベーターなしの5階に引っ越した時、さすがに最初のうちは足が疲れましたが、すぐに慣れて平気になりました。

今も階段しかない3階で生活していますが全く不便を感じることもなく、むしろこの生活だからこそ手に入れられた足腰に感謝しています。

4.間取りに表れる特徴

各部屋が階段を境に左右振り分けの配置ですと、南北両サイドの居室外側に通路がないためプライバシーが確保しやすいです。

窓を開放して風通しをよくしたり、睡眠中でも外を歩く人の気配がないため落ち着くことができます。

もちろんデメリットも

1.一般的にはいろいろ古い

建てられた時代がほぼ昭和ですから、ひとことで言えば「古い」のですが、この中には、

・設備的な問題…水回り設備やその配管の状態、リフォーム時の交換可能な追加設備・機種の制約

・間取りなどの問題…耐力壁があると間取り変更の制限、サッシの気密性、天井の高さが低い

・いわゆる旧耐震基準で建てられている場合…大災害時の不安(これはどんな建物でもありますが…)や、住宅ローンが利用しにくいなど売買において不利であることが多い、また税制面での優遇が受けられない

・「建て替え」や「修繕」…いつかやってくるであろう金銭的・精神的負担が未知数

以上の点などがあげられます。

2.将来的な生活上の問題

元気なうちは階段の昇り降りが平気でも、年齢とともにその移動自体が負担になってくる可能性はあります。外出がつい億劫になってさらに体力が低下することも。
もちろん、階段を使う機会が多いということはふだんからでも昇降時につまづいたり転落することだってあり得ます。

余談ではありますが「リフォーム工事」、その内容によっては資材の上げ下ろしなど、なかなか業者泣かせな部分もあります。

さいごに

住んでみた(住んでいる)個人の感想としてはエレベーターなしマンションでも現状に充分満足していますが、あなたの感じ方はいかがでしょう。

もしエレベーターなしマンションを選ぶなら、大事なポイントを最後にひとつ。

是非、「階段の幅」は注目してください。

わずか数十㎝の違いでも、すれ違い時のストレスも少なく、大きな荷物でも運びやすく、全然気持ちのゆとりができます。

こだわりの住まい選びは、どんな物件にでもいえることですが、ときに他人やプロの意見も参考にメリット・デメリットをよく考慮してみましょう。